- はじめに|箇条8は「決めたことを現場で続ける」ための箇条
- 1. 箇条8「運用」で会社が確認すること
- 2. ISO45001の運用管理とは|決めた対策を現場で守れる形にすること
- 3. リスク低減策を現場に落とし込むポイント
- 4. 作業手順書・ルールの作り方
- 5. 変更管理|設備・工程・人が変わる前に確認する
- 6. 調達|購入品・設備・サービスの安全衛生面を確認する
- 7. 請負者・協力会社の管理
- 8. 外部委託|任せた作業も必要な範囲で確認する
- 9. 緊急事態への準備及び対応
- 10. 確認しておきたい記録・資料
- 11. 内部監査や見直しの際に意識したい視点
- 12. 初めて担当する方がつまずきやすいポイント
- 13. 確認チェックリスト
- よくある質問
- まとめ|箇条8は「決めた対策を現場で続ける」ための仕組み
- 注意すべき法令・公的情報について
- あわせて読みたい(ISO45001解説シリーズ)
はじめに|箇条8は「決めたことを現場で続ける」ための箇条
ISO45001の箇条8「運用」は、シリーズ第6回として取り上げるテーマです。
これまでの記事では、危険源を特定し、リスクを評価し、対策や目標を決める「計画」の部分、つまり箇条6を中心に扱ってきました。
箇条8では、その計画を現場でどう実行し、どう続けていくかを確認します。
担当者になったばかりの方にとって、「運用」という言葉は範囲が広く感じられるかもしれません。
しかし、考え方自体はシンプルです。
箇条8で確認したいことは、次の一点に集約できます。
決めた安全衛生対策が、現場で実際に機能しているか。
具体的には、次のような場面が関係します。
- リスクアセスメントで決めた対策を作業手順に反映する
- 必要な教育を行う
- 点検や確認を継続する
- 設備や工程を変更するときに安全衛生面を見直す
- 購入する設備、薬品、保護具、外部サービスを確認する
- 請負業者や外部委託先にも必要なルールを共有する
- 緊急事態に備えて対応を決めておく
この記事では、ISO45001の箇条8に関連する内容を、運用管理、変更管理、調達、請負者管理、外部委託、緊急事態対応という切り口で整理します。
規格の逐条解説ではなく、実務担当者が「自社で何を確認すればよいか」が分かるように説明します。
1. 箇条8「運用」で会社が確認すること
箇条8に関連して、多くの会社が実務上確認しているテーマは、おおよそ次のように整理できます。
| テーマ | 実務で考えること |
|---|---|
| 運用の計画及び管理 | リスクを管理するための手順、基準、点検、教育が整っているか |
| 危険源の除去及びリスク低減 | リスクアセスメントで決めた対策が現場に落とし込まれているか |
| 変更の管理 | 設備、工程、人員、材料、作業方法が変わる前に安全衛生面を確認しているか |
| 調達 | 購入する設備、薬品、保護具、外部サービスが安全衛生に影響しないか確認しているか |
| 請負者 | 請負業者、協力会社との作業で安全衛生リスクを管理しているか |
| 外部委託 | 外部に任せた業務が自社の安全衛生に影響する場合、必要な範囲で確認しているか |
| 緊急事態への準備及び対応 | 火災、漏えい、災害、急病、事故などへの備えができているか |
初めて箇条8に取り組む方は、まず次の流れで理解すると進めやすくなります。
危険源を見つける
→ リスクを評価する
→ 対策を決める
→ 手順・教育・点検に落とす
→ 変更時や外部作業でも安全を保つ
→ 緊急時に備える
このうち、「手順・教育・点検に落とす」以降が、箇条8で中心的に確認する部分です。
箇条8は、書類の整備だけで終わらせる箇条ではありません。
現場でルールが守られているか、作業者が理解しているか、変更があったときに見直しが行われているかを、継続的に確認していくことが大切です。
2. ISO45001の運用管理とは|決めた対策を現場で守れる形にすること
2-1. 運用管理の考え方
運用管理とは、労働安全衛生上のリスクを管理するために、必要な手順、基準、教育、点検、記録などを整えることです。
言い換えると、次のようになります。
運用管理とは、危険な作業を安全に行うためのルールを決め、それを現場で実行できる状態にしておくことです。
例えば、リスクアセスメントで「フォークリフトと歩行者の接触リスクが高い」と評価された場合、運用管理の段階で確認したいことは次のような点です。
- 歩行者通路とフォークリフト通路を分けているか
- 速度制限を決めているか
- 一時停止場所やミラーを設置しているか
- 運転者と歩行者の双方に教育・周知をしているか
- ルールが守られているかを点検しているか
- ヒヤリハットが出たときに見直しているか
このように、運用管理では、リスクアセスメントで決めた対策を「実際に守られる仕組み」に変えていくことがポイントになります。
2-2. 運用管理で確認したい主な項目
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 作業手順 | 安全な作業方法が明確になっているか |
| 管理基準 | 何を守ればよいか、判断基準があるか |
| 設備対策 | カバー、インターロック、局所排気装置、非常停止などがあるか |
| 教育・周知 | 作業者が手順やリスクを理解しているか |
| 点検 | 設備、保護具、作業環境を確認しているか |
| 記録 | 点検、教育、測定、改善の記録があるか |
| 見直し | 災害、ヒヤリハット、変更時に手順を見直しているか |
運用管理は、手順書を作ること自体が目的ではありません。
手順書があっても、現場で使われていなければ意味がありません。
反対に、現場でうまく運用されていても、特定の人にしか分からない状態では、安定した仕組みとは言いにくくなります。
大切なのは、必要なルールがあり、現場で実行され、確認され、必要に応じて見直されている状態を保つことです。
3. リスク低減策を現場に落とし込むポイント
3-1. 「対策を決めた」で終わらせない
リスクアセスメントでは、危険源を特定し、リスクを評価し、対策を決めます。
実務でよく見られるのは、リスクアセスメント表には対策が書かれているものの、それが作業手順や教育内容に反映されていないというケースです。
例えば、リスクアセスメント表に次のように記載されていたとします。
| 危険源 | リスク | 対策 |
|---|---|---|
| 回転機械 | 巻き込まれ | カバーを設置し、清掃時は停止する |
この場合、箇条8の観点では、次のような点まで確認します。
- 実際にカバーが設置されているか
- カバーを外したまま運転できない仕組みになっているか
- 清掃時の停止手順が決まっているか
- 清掃担当者が手順を理解しているか
- 非定常作業のときも同じルールが守られているか
- 点検記録や教育記録が残っているか
- 対策後に残ったリスクを確認しているか
対策は「決める」だけでなく、「現場で実行できる状態にする」ところまでセットで考えることが大切です。
3-2. 保護具だけに頼らない考え方
安全衛生対策において、保護具は重要な役割を持ちます。
しかし、最初から保護具だけに頼ると、着用忘れ、選定ミス、劣化、保管不良などによってリスクが残ってしまうことがあります。
リスク低減策を検討する際は、できるだけ次のような優先順位で考えると整理しやすくなります。
| 優先順位 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 危険源そのものをなくす | 危険な作業を廃止する、手作業を自動化する |
| 2 | 危険性の低いものに置き換える | 有害性の低い薬品に変更する |
| 3 | 工学的対策を行う | カバー、インターロック、局所排気装置を設置する |
| 4 | 管理的対策を行う | 手順書、教育、作業時間管理、立入制限を行う |
| 5 | 保護具を使用する | 手袋、保護メガネ、防じんマスク、墜落制止用器具などを使用する |
例えば粉じん作業であれば、防じんマスクの着用だけでなく、粉じんの発生自体を減らす、局所排気装置を設置する、清掃方法を見直すといった対策も併せて検討します。
保護具は大切な手段ですが、最後の砦です。
それより手前の対策から検討することで、より安定したリスク低減につながります。
4. 作業手順書・ルールの作り方
4-1. 現場が使える形を意識する
運用管理では、必要に応じて作業手順書やルールを整備します。
ただし、すべての作業に分厚い手順書を作る必要はありません。
優先したいのは、次のような作業です。
- 重大なリスクがある作業
- 法令に関係する作業
- 非定常作業
- 経験に頼りがちな作業
- 新人や応援者が迷いやすい作業
- 請負者や協力会社と一緒に行う作業
手順書に含めておきたい項目の例は、次のとおりです。
- 作業の目的
- 対象となる作業・設備
- 作業前の確認事項
- 必要な資格・教育
- 使用する保護具
- 安全な作業手順
- 禁止事項
- 異常時・緊急時の対応
- 作業後の確認
- 記録の残し方
現場で実際に使われる手順書は、長い文章よりも、写真、図、短い文章、チェックリストを組み合わせた方が伝わりやすいことがあります。
自社の現場に合った見せ方を工夫してみてください。
4-2. 非定常作業の手順も忘れずに確認する
通常作業の手順は整っていても、非定常作業の手順が弱いままになっていることがあります。
非定常作業とは、普段とは違う作業のことです。
例えば、次のような作業です。
- 設備の清掃
- 詰まり除去
- 修理・点検
- 段取り替え
- 試運転
- トラブル対応
- 停電後の復旧
- 請負業者との共同作業
重大な労働災害は、通常作業よりも、こうした非定常作業の最中に発生することがあります。
「いつもはやらない作業」「急いで対応する作業」「手順が人によって違う作業」は、特に注意して手順や教育を確認しておきたいポイントです。
5. 変更管理|設備・工程・人が変わる前に確認する
5-1. 変更管理の考え方
箇条8に関連して、変更管理も実務上重要なテーマです。
変更管理とは、設備、工程、作業方法、材料、人員、外注先などが変わる際に、安全衛生への影響を事前に確認することです。
シンプルに言うと、次のようなイメージです。
変更管理とは、変わる前に危険が増えないかを確認する仕組みです。
次のような変更があるときは、安全衛生リスクが変わる可能性があります。
- 新しい設備を導入する
- 古い設備を更新する
- 作業手順を変更する
- 原材料や化学物質を変更する
- 生産量や作業時間が増える
- 作業場所やレイアウトを変更する
- 人員体制を変更する
- 夜勤や少人数作業を始める
- 請負業者や外注先を変更する
- 新人、派遣労働者、外国人労働者が作業に入る
変更そのものが問題というわけではありません。
設備更新や工程改善は、むしろ安全性を高める機会にもなります。
大切なのは、変更によって新しい危険源が生じないか、既存のリスクが高まらないかを、変更の前に確認しておくことです。
5-2. 変更時に確認したい項目
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 変更内容 | 何を、いつ、どこで、どのように変えるのか |
| 危険源 | 新しい危険源が発生しないか |
| リスク | 既存のリスクが高まらないか |
| 法的要求事項 | 資格、届出、点検、教育、作業主任者などに影響がないか |
| 教育 | 作業者に新しい手順を周知したか |
| 設備対策 | カバー、非常停止、換気、表示などが必要か |
| 保護具 | 必要な保護具が変わらないか |
| 請負者 | 外部業者が関係する場合、ルールを共有したか |
| 緊急時対応 | 事故、漏えい、火災、急病時の対応に変更がないか |
| 変更後確認 | 実際に問題なく運用できているか確認したか |
中小企業では、変更管理を複雑な仕組みにしすぎると、かえって現場で使われなくなってしまいます。
設備申請書、購買申請書、作業変更届、外注先変更の記録などに、安全衛生確認欄をひとつ追加するだけでも、実務に落とし込みやすくなります。
5-3. 変更管理の記録イメージ
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 変更件名 | 新型プレス機の導入 |
| 変更部署 | 製造部 |
| 変更予定日 | 2026年○月○日 |
| 変更内容 | 既存設備を新型プレス機に更新 |
| 関連する危険源 | はさまれ、巻き込まれ、騒音、金型交換作業 |
| 想定されるリスク | 清掃・段取り替え時のはさまれ、試運転時の誤操作 |
| 必要な対策 | 安全カバー確認、非常停止確認、作業手順書改訂、教育実施 |
| 法令・資格確認 | 特別教育、作業主任者、定期自主検査の要否を確認 |
| 関係者への周知 | 作業者、保全担当、管理者へ教育実施 |
| 変更後確認 | 稼働1か月後にヒヤリハット、点検記録、手順遵守状況を確認 |
立派な様式を整えることが目的ではありません。
変更内容、安全衛生への影響、必要な対応、変更後の確認が一目で分かる記録になっていれば、実務でも審査でも説明しやすくなります。
6. 調達|購入品・設備・サービスの安全衛生面を確認する
6-1. 調達も安全衛生に関係する
調達とは、設備、材料、薬品、工具、保護具、外部サービスなどを購入・利用することです。
一見、安全衛生とは関係が薄いように見えるかもしれません。
しかし、購入したものによって新しい危険源が生じることがあります。
例えば、次のようなケースです。
- 新しい薬品を購入したら、有害性や引火性が高かった
- 安価な保護具を購入したが、作業内容に合っていなかった
- 新しい機械に安全カバーが不足していた
- 工具の仕様が作業に合わず、無理な姿勢が増えた
- 外部サービスの作業者が自社の安全ルールを知らなかった
調達を価格や納期だけで判断すると、安全衛生上の問題を見落としてしまうことがあります。
6-2. 調達時に確認したいこと
| 対象 | 確認項目 |
|---|---|
| 設備・機械 | 安全装置、非常停止、取扱説明書、点検方法、騒音、保守作業 |
| 化学物質 | SDS、危険有害性、保管方法、保護具、漏えい時対応、廃棄方法 |
| 保護具 | 作業内容に合っているか、規格・性能、サイズ、交換頻度 |
| 工具・治具 | 作業姿勢、重量、はさまれ・切創リスク、点検方法 |
| 外部サービス | 作業内容、安全ルール、資格、緊急時連絡、立入範囲 |
| 請負工事 | 作業計画、危険作業、火気使用、高所作業、混在作業 |
特に化学物質を購入する場合は、SDSを確認し、安全衛生担当者、現場責任者、購買担当者が連携することが重要です。
保護具についても、「安いから」「以前から使っているから」だけで選ぶのではなく、作業内容、危険源、使用時間、作業者の使いやすさに合っているかを確認しましょう。
「買ってから確認する」のではなく、「使う前に確認する」流れを社内に作っておくことが大切です。
7. 請負者・協力会社の管理
7-1. 請負者管理とは
請負者とは、自社の敷地内や自社の管理する作業場所で業務を行う外部の会社や作業者のことです。
例えば、次のような人たちが想定されます。
- 設備保全業者
- 工事業者
- 清掃業者
- 警備会社
- 物流業者
- 構内請負業者
- 外注加工業者
- 点検・測定業者
請負者が関わる作業では、自社の作業者と外部作業者が同じ場所で働く「混在作業」が発生することがあります。
どちらか一方だけが安全ルールを知っていても十分とは言えません。
自社の危険源、立入禁止区域、緊急時連絡先、保護具、火気使用ルールなどを、必要な範囲で共有することが大切です。
7-2. 請負者に伝えておきたい情報
請負者に伝えておきたい情報の例は、次のとおりです。
- 構内の安全ルール
- 立入禁止場所
- 通行ルート
- 保護具の着用ルール
- 火気使用ルール
- 高所作業、クレーン作業、電気作業などの注意点
- 危険物、薬品、ガス、粉じんなどの危険源
- 緊急時の連絡先
- 避難場所
- 事故・ヒヤリハット発生時の報告方法
- 作業終了後の確認事項
契約書や発注書だけでなく、作業前打合せ、入構教育、作業許可書、KY活動などを組み合わせて伝えると、より実効性が高まります。
7-3. 見落としやすいポイント
請負者管理で見落としやすいポイントは、次のとおりです。
- 工事業者に任せきりになっている
- 作業前打合せが形式的になっている
- 自社の作業者に外部作業の内容が共有されていない
- 火気使用や高所作業の許可が曖昧
- 請負者の資格・教育状況を確認していない
- 緊急時の連絡先が共有されていない
- 作業後の原状回復や片付け確認が不十分
- ヒヤリハットや事故があっても自社の改善に反映されていない
請負者管理は、外部の会社を厳しく監視することが目的ではありません。
自社と請負者の双方が安全に作業できるよう、必要な情報を共有し、作業前、作業中、作業後で確認を行うことがポイントです。
8. 外部委託|任せた作業も必要な範囲で確認する
外部委託とは、自社の業務の一部を外部の会社に任せることです。
請負者管理が「自社の構内や管理下で作業する外部作業者」に焦点を当てるのに対し、外部委託は、業務そのものを外部に任せる場面も含めて考えます。
外部に任せたからといって、安全衛生に関する確認が一切不要になるわけではありません。
委託する作業の内容によっては、自社の働く人、自社の作業場所、自社の製品・サービス、自社の安全衛生パフォーマンスに影響することがあります。
特に、次のような業務は確認しておきたい対象です。
- 構内作業の請負
- 設備保全
- 清掃
- 倉庫作業
- 物流作業
- 工事
- 化学物質を扱う外注作業
- 危険作業を伴う外注加工
すべての委託先に同じレベルの確認を求めると、管理が重くなり継続しにくくなります。
リスクの程度に応じて、確認の深さを変えるという考え方が実務的です。
| リスクの程度 | 対象例 | 確認例 |
|---|---|---|
| 高 | 高所作業、火気作業、化学物質作業、設備工事 | 作業計画、資格、作業許可、立会い、緊急時対応 |
| 中 | 清掃、物流、構内作業、設備点検 | 入構教育、作業ルール、保護具、連絡体制 |
| 低 | 一般的な事務サービスなど | 必要に応じた簡易確認 |
リスクの高い作業から優先して確認していくと、無理のない運用につながります。
9. 緊急事態への準備及び対応
9-1. 緊急事態とは
緊急事態とは、通常の管理だけでは対応しきれない事故、災害、異常状態のことです。
労働安全衛生の観点では、次のようなものが想定されます。
- 火災、爆発
- 化学物質の漏えい
- ガス漏れ
- 酸欠
- 感電
- 機械へのはさまれ・巻き込まれ
- 高所からの墜落
- 熱中症、急病
- 大規模な労働災害
- 地震、台風、豪雨などの自然災害
- 停電、設備停止
- 感染症の集団発生
緊急事態対応では、「起きてから考える」のではなく、起こり得る事態をあらかじめ想定し、対応を決めておくことが重要です。
9-2. 緊急時対応で決めておきたいこと
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 想定する緊急事態 | 火災、漏えい、災害、急病、機械災害など |
| 初動対応 | 誰が、何を、どの順番で行うか |
| 通報・連絡 | 119番、社内連絡、管理者、関係部署、請負者への連絡 |
| 避難 | 避難経路、避難場所、点呼方法 |
| 応急処置 | 救急箱、AED、救護担当、応急手当 |
| 設備停止 | 非常停止、電源遮断、ガス遮断、薬品供給停止 |
| 漏えい対応 | 吸着材、回収容器、保護具、立入制限 |
| 訓練 | 避難訓練、漏えい訓練、通報訓練、救急対応訓練 |
| 見直し | 訓練結果、事故、ヒヤリハットを踏まえた改善 |
緊急時対応は、手順書を作って終わりではありません。
実際に訓練し、うまくいかなかった点を見直すことで、実効性が高まっていきます。
9-3. 緊急時対応の記録イメージ
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 訓練名 | 化学物質漏えい対応訓練 |
| 実施日 | 2026年○月○日 |
| 対象部署 | 製造部、設備管理、総務 |
| 想定 | 洗浄剤容器が転倒し、床に漏えい |
| 実施内容 | 立入禁止、保護具着用、吸着材による回収、廃棄処理、連絡訓練 |
| 良かった点 | 初動連絡は迅速だった |
| 課題 | 吸着材の保管場所を知らない作業者がいた |
| 改善内容 | 保管場所表示を追加し、朝礼で周知 |
| 次回確認 | 3か月後の職場巡視で確認 |
緊急事態対応では、訓練を「実施したこと」よりも、訓練から「何を改善したか」の方が重要です。
10. 確認しておきたい記録・資料
箇条8に関連して、次のような記録・資料を整理しておくと、社内での説明や見直しがしやすくなります。
| テーマ | 記録・資料の例 |
|---|---|
| 運用管理 | 作業手順書、作業標準、点検表、管理基準 |
| リスク低減策 | リスクアセスメント表、改善記録、残留リスク確認記録 |
| 教育・周知 | 教育記録、朝礼記録、手順説明記録 |
| 点検 | 設備点検記録、保護具点検記録、職場巡視記録 |
| 変更管理 | 設備変更記録、工程変更記録、購買前確認記録 |
| 調達 | SDS、取扱説明書、保護具選定記録、購入前確認記録 |
| 請負者 | 入構教育記録、作業許可書、作業前打合せ記録 |
| 外部委託 | 委託先確認記録、契約書、作業ルール、連絡体制表 |
| 緊急事態対応 | 緊急時対応手順、避難訓練記録、漏えい訓練記録、AED点検記録 |
記録は、審査のためだけに残すものではありません。
現場の実施状況を確認し、次の改善につなげるための材料として活用していくとよいでしょう。
11. 内部監査や見直しの際に意識したい視点
箇条8に関連する内容を内部監査や社内の見直しで確認する際は、次のような視点が役立ちます。
- リスクアセスメントで決めた対策が現場で実施されているか
- 作業手順書やルールが実際の作業に合っているか
- 非定常作業の管理ができているか
- 設備や工程を変更するとき、安全衛生面を確認しているか
- 新しい化学物質や設備を購入する前に確認しているか
- 請負業者に必要な安全ルールを伝えているか
- 緊急事態を想定し、訓練や見直しを行っているか
- 手順、教育、点検、記録がつながっているか
確認の深さは、業種、規模、リスクの大きさによって変わります。
大切なのは書類の量ではなく、危険源を評価し、必要な対策を決め、その対策が現場で実行されていることを、自分たちの言葉で説明できる状態にしておくことです。
12. 初めて担当する方がつまずきやすいポイント
つまずき1|リスクアセスメント表と現場の手順がつながっていない
対策が決まっているのに、作業手順書や教育資料に反映されていないことがあります。
対策を決めたら、現場でどう実行するかまで確認しておきましょう。
つまずき2|手順書が古いままになっている
設備、作業方法、人員、材料が変わっているのに、手順書が更新されていないケースです。
変更時には、手順書や点検表の見直しもセットで確認すると安心です。
つまずき3|非定常作業の管理が弱い
清掃、修理、詰まり除去、段取り替え、トラブル対応などは、通常作業よりもリスクが高くなることがあります。
たまにしかやらない作業ほど、手順や教育を意識しておきたいポイントです。
つまずき4|購買部門と安全衛生担当者の連携が薄い
新しい設備や薬品を購入してから、安全衛生担当者が初めて知るというケースがあります。
購買前にSDS、仕様、安全装置、保護具、教育の必要性を確認する流れを作っておくと防ぎやすくなります。
つまずき5|請負業者に任せきりになっている
請負業者の作業だからといって、自社に関係ないわけではありません。
自社構内で作業する場合や、自社の働く人と混在する場合は、必要な安全ルールの共有を意識しておきましょう。
つまずき6|緊急時対応が紙の手順だけになっている
手順があっても、作業者が知らなければ実際には使えません。
訓練、表示、備品確認、連絡先確認を通じて、実際に動ける状態を整えておくことが大切です。
13. 確認チェックリスト
実務での振り返りや内部監査の準備に活用できる形でまとめています。
運用管理
- リスクアセスメントで決めた対策が現場の手順に反映されているか
- 重大リスクのある作業に手順や管理基準があるか
- 作業者が手順を理解しているか
- 保護具、設備、工具の点検が行われているか
- 非定常作業の手順が整備されているか
- 手順が現場の実態に合っているか
- ヒヤリハットや災害後に手順を見直しているか
リスク低減策
- 保護具だけに頼らず、危険源の除去や工学的対策を検討しているか
- 対策後の残留リスクを確認しているか
- 高リスク作業から優先して対策しているか
- 対策の実施状況を確認しているか
- 作業者にとって実行可能な対策になっているか
変更管理
- 設備、工程、材料、作業方法の変更時に安全衛生面を確認しているか
- 新しい危険源が発生しないか確認しているか
- 法的要求事項、資格、教育、点検への影響を確認しているか
- 変更前に関係者へ周知しているか
- 変更後に実際の運用状況を確認しているか
- 変更管理の記録を残しているか
調達
- 新しい設備・機械の安全装置を確認しているか
- 新しい化学物質のSDSを確認しているか
- 保護具が作業内容に適しているか確認しているか
- 購買前に安全衛生担当者が関与する仕組みがあるか
- 外部サービスの作業内容とリスクを確認しているか
請負者・外部委託
- 請負業者に構内ルールを伝えているか
- 作業前打合せや入構教育を実施しているか
- 火気作業、高所作業、電気作業などの許可ルールがあるか
- 自社の作業者と請負者の混在作業を確認しているか
- 緊急時連絡先を共有しているか
- 作業後の確認を行っているか
緊急事態対応
- 想定される緊急事態を整理しているか
- 火災、漏えい、急病、災害時の対応手順があるか
- 避難経路、避難場所、連絡先が周知されているか
- 救急箱、AED、吸着材、保護具などの備品を確認しているか
- 訓練を実施しているか
- 訓練結果や事故を踏まえて手順を見直しているか
よくある質問
Q1. 箇条8「運用」は、作業手順書を作ればよいということですか?
作業手順書は大切な要素ですが、それだけで十分とは言えません。
箇条8に関連して確認したいのは、リスクアセスメントで決めた対策が現場で実際に実行されているかどうかです。
手順書に加えて、教育、点検、記録、変更時の見直し、請負者への周知、緊急時対応なども合わせて考えるとよいでしょう。
Q2. すべての作業に手順書が必要ですか?
すべての作業に詳細な手順書を作る必要はありません。
ただし、重大なリスクがある作業、法令に関係する作業、非定常作業、経験に頼りがちな作業については、手順や管理基準を明確にしておくと安心です。
写真付き手順、チェックリスト、掲示物、動画など、現場に合った方法を選んでみてください。
Q3. 変更管理はどのような場面で必要になりますか?
設備、工程、材料、作業方法、人員体制、レイアウト、外注先などが変わる場合は、安全衛生への影響を確認しておくとよいでしょう。
特に、新しい設備や化学物質を導入するとき、非定常作業が増えるとき、請負業者が関係するときは、事前の確認を意識してみてください。
Q4. 請負業者にはどこまで安全ルールを伝える必要がありますか?
作業内容やリスクに応じて、必要な範囲で伝えます。
自社構内で作業する場合は、通行ルート、立入禁止場所、保護具、火気使用、緊急時連絡先、避難場所などの共有が一般的です。
高所作業、火気作業、電気作業、化学物質作業などリスクが高い作業では、作業計画や許可手続きも確認しておくと安心です。
Q5. 緊急時対応は避難訓練だけで十分ですか?
避難訓練は重要ですが、それだけで十分とは限りません。
職場のリスクに応じて、化学物質漏えい、火災、急病、機械災害、停電、自然災害なども想定しておくとよいでしょう。
訓練を実施した後は、うまくいかなかった点を見直し、手順、備品、表示、連絡体制の改善につなげていくことが大切です。
Q6. 購買部門が安全衛生に関わる必要はありますか?
関わる必要があります。
購入する設備、薬品、工具、保護具、外部サービスは、安全衛生に影響することがあります。
購買部門だけで判断せず、安全衛生担当者、現場責任者と連携しておくと、導入後のトラブルを防ぎやすくなります。
Q7. 内部監査や審査では箇条8についてどのような点を見られますか?
一般的には、計画した対策が現場で実行されているか、手順や教育があるか、変更時に安全衛生を確認しているか、請負者や外部委託の管理ができているか、緊急事態に備えているかといった点が確認されることがあります。
ただし、確認の深さは業種、規模、リスクの大きさによって異なります。
形式的な書類の有無よりも、自社のリスクに合った運用ができているかを説明できることが重要です。
まとめ|箇条8は「決めた対策を現場で続ける」ための仕組み
ISO45001の箇条8「運用」は、箇条6で決めた計画や対策を、現場で実行し続けるための取り組みとして整理できます。
今回の内容を振り返ると、ポイントは次のとおりです。
- リスクアセスメントで決めた対策を、手順、教育、点検に落とし込む
- 保護具だけに頼らず、危険源の除去や工学的対策を優先して検討する
- 非定常作業の手順を見落とさない
- 設備、工程、材料、人員、外注先が変わるときは、変更管理を行う
- 調達時に、安全衛生面を確認する
- 請負者や協力会社に、必要な安全ルールを伝える
- 緊急事態を想定し、訓練と見直しを行う
箇条8は、ISO事務局だけで完結するテーマではありません。
現場管理者、働く人、購買担当者、設備担当者、請負業者など、実際に作業に関わる方々と連携しながら進めていくことが大切です。
まずは自社のリスクアセスメント表を開き、そこに書かれた対策が、作業手順、教育、点検、記録にきちんとつながっているかを確認してみてください。
そこから、箇条8の運用管理は実務に近づいていきます。
注意すべき法令・公的情報について
箇条8「運用」に関連する内容は、作業内容や業種によって、さまざまな労働安全衛生関連法令が関わってくる場合があります。
法令の適用は、業種、事業場規模、作業内容、設備、使用する化学物質、作業場所によって異なります。
本記事の内容だけで判断せず、次のような公的情報を確認するようにしてください。
- 厚生労働省
- 都道府県労働局、労働基準監督署
- 職場のあんぜんサイト
- 中央労働災害防止協会
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- 第2回|ISO45001の箇条4「組織の状況」とは?
- 第3回|ISO45001の箇条5「リーダーシップ及び働く人の参加」とは?
- 第4回|ISO45001の箇条6「計画」とは?危険源・リスクアセスメントを解説
- 第5回|ISO45001の箇条7「支援」とは?力量・認識・コミュニケーション・文書化情報
- 第7回|ISO45001の箇条9「パフォーマンス評価」とは?
本記事は実務担当者向けの解説記事であり、ISO45001の規格要求事項そのものを逐条的に説明するものではありません。
実際の運用にあたっては、自社の状況に応じて判断し、必要に応じて公的機関、専門家、認証機関にも確認してください。


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