ISO14001を担当していると、「リスクと機会」という言葉が出てきます。
しかし、EMSを担当して間もない方にとっては、次のような疑問を感じることも多いのではないでしょうか。
- リスクと機会とは、具体的に何を指しているのか分からない
- リスクは事故や法令違反だけを考えればよいのか
- 機会とは何を書けばよいのか分からない
- 環境側面や順守義務とどうつながるのか分からない
- 一覧表は作っているが、実際の活動につながっていない
- ISO14001:2026では何を見直せばよいのか知りたい
こうした疑問は、ISO14001に取り組む多くの担当者が感じやすいものです。まず「何を考えればよいのか」の見通しを持つことが、第一歩になります。
リスクと機会は、実務では次のように考えると整理しやすくなります。
リスクとは、自社のEMSや環境対応に悪い影響を与える可能性。
機会とは、改善、コスト削減、顧客評価、環境価値の向上につながる可能性。
この記事では、ISO14001の経験が浅いEMS担当者向けに、リスクと機会の意味、具体例、洗い出し方、そして環境目標や実際の活動にどうつなげるかを解説します。ISO14001:2026への対応を念頭に置きながら、実務で使いやすい視点でまとめています。
ISO14001におけるリスクと機会とは
リスクは「事故」や「不適合」だけではない
リスクと聞くと、次のようなものを思い浮かべる方が多いかもしれません。
- 法令違反
- 環境事故
- 化学物質の漏えい
- 排水基準の超過
- 廃棄物処理の不備
- 審査での不適合
もちろん、これらは重要なリスクです。しかし、ISO14001で考えるリスクは、それだけにとどまりません。
EMSには「意図した成果」があります。たとえば、環境パフォーマンスを向上させること、順守義務を満たすこと、環境目標を達成すること、環境への悪影響を防ぐことなどです。
こうした成果を妨げる可能性があるものを、広くリスクとして考えます。
たとえば、次のようなものもリスクになり得ます。
- エネルギー価格が上がり、省エネ目標の達成が難しくなる
- 顧客からの環境要求に対応できず、取引に影響する
- 外部委託先の管理が不十分で、環境トラブルが発生する
- 猛暑や豪雨で操業や物流に影響が出る
- 担当者任せになり、EMS活動が形だけになる
- 環境側面評価表が更新されず、実態に合っていない
「危険な事故」だけがリスクではありません。EMSをうまく機能させるうえで妨げになるものを幅広く考えると、整理しやすくなります。
機会は「改善や価値につながる可能性」
機会とは、改善や価値につながる可能性のことです。
「よいことを書けばよい」という単純なものではなく、自社の環境活動や事業にとって、改善・効率化・信頼向上・環境価値の創出につながるかどうかを考えることが大切です。
実務では、次のように考えると分かりやすくなります。
- 省エネによってコストを削減できる
- 廃棄物を減らして処理費用を下げられる
- 分別や再資源化を進めて資源の有効利用につなげられる
- 省エネ性能の高い製品を提案して顧客評価を高められる
- 環境配慮サービスを新しい強みとして打ち出せる
- 気候変動対応を進めて取引継続につなげられる
- EMS活動を通じて社員の環境意識を高められる
機会は、環境側面のプラスの影響ともつながります。
たとえば、省エネ製品の開発、長寿命設計、リサイクルしやすい製品設計、顧客の省エネに役立つサービスなどは、自社だけでなく、顧客や社会全体への環境価値の創出につながる場合があります。
こうした視点も、機会として考えてみてください。
リスクと機会はEMSの目的を達成するために考えるもの
リスクと機会を考える目的は、一覧表を作ることではありません。
把握した内容を、必要な対策や活動につなげることが大切です。
| リスク・機会 | 取組みの例 |
|---|---|
| 化学物質の漏えいリスク | 保管ルールの整備、定期点検、緊急時対応訓練 |
| エネルギー価格上昇リスク | 省エネ活動の推進、設備更新、使用量の見える化 |
| 顧客からのCO2情報要求 | データ収集方法の整備、回答体制の確立 |
| 省エネ製品・サービスへの関心の高まり | 省エネ設計の強化、顧客提案の拡充 |
| 廃棄物処理費用の増加 | 分別の徹底、歩留まり改善、再資源化の推進 |
リスクと機会は、EMSを実際に動かすための「考える材料」です。整理した内容を活動につなげることで、はじめて意味を持ちます。
リスクと機会はどこから出てくるのか
組織の状況から考える
ISO14001では、自社を取り巻く状況を理解することが重要とされています。
組織の状況とは、会社を取り巻く環境や課題のことです。
たとえば、次のようなものが該当します。
- 気候変動の影響
- エネルギー価格の上昇
- 原材料の調達不安
- 人手不足
- 法規制の強化
- 顧客の環境要求の高まり
- 地域からの騒音・臭気への関心
- サプライチェーン全体での脱炭素要求
- 資源循環や生物多様性への関心
こうした状況は、リスクと機会の両面につながる場合があります。
たとえば、エネルギー価格の上昇はコスト増のリスクですが、省エネ改善を進める機会にもなります。顧客の環境要求の高まりは、対応できなければ取引上のリスクですが、対応できれば顧客評価を高める機会にもなります。
利害関係者のニーズから考える
利害関係者とは、自社に関係する人や組織のことです。
たとえば、顧客、親会社、取引先、行政、地域住民、従業員、金融機関、サプライヤーなどが挙げられます。
これらの関係者からの要求や期待は、リスクと機会につながります。
| 利害関係者 | 要求・期待 | リスク | 機会 |
|---|---|---|---|
| 顧客 | CO2排出量の情報提供 | 対応できないと取引に影響 | データ管理を整え信頼向上 |
| 行政 | 法令・条例の順守 | 違反すると行政指導や罰則 | 管理体制の強化 |
| 地域住民 | 騒音・臭気への配慮 | 苦情や信頼低下 | 地域との関係改善 |
| 従業員 | 安全で快適な作業環境 | 猛暑・臭気などによる不満 | 働きやすさの向上 |
| 親会社 | 環境目標への協力 | グループ方針に対応できない | グループ内評価の向上 |
利害関係者の要求を整理すると、リスクと機会がより具体的に見えてきます。
環境側面から考える
環境側面とは、自社の活動・製品・サービスが環境と関わるポイントのことです。
環境側面は、リスクと機会を考えるうえで重要な入口になります。
| 環境側面 | リスク | 機会 |
|---|---|---|
| 電力使用 | エネルギー価格上昇、CO2排出量増加 | 省エネ、コスト削減 |
| 廃棄物発生 | 処理費用増加、不適正処理 | 分別、再資源化、歩留まり改善 |
| 化学物質使用 | 漏えい、法令違反、健康被害 | 代替品検討、管理レベル向上 |
| 排水 | 基準超過、苦情、行政指導 | 水使用量削減、処理改善 |
| 製品使用時のエネルギー消費 | 顧客使用時の環境負荷 | 省エネ製品の開発、顧客の省エネ支援 |
| 梱包材使用 | 資源消費、廃棄物増加 | 簡易包装、通い箱、リサイクル材採用 |
環境側面を見直すときは、「この環境側面にはどのようなリスクと機会があるか」を同時に考えると、EMSの全体像がつながりやすくなります。
省エネ製品、長寿命設計、リサイクル設計など、環境へのプラスの影響につながる活動も、機会として積極的に取り上げましょう。
順守義務から考える
順守義務とは、自社が守る必要のある法律、条例、協定、顧客要求などのことです。
環境に関する順守義務には、たとえば次のようなものがあります。
- 廃棄物処理に関する法律
- 排水・排ガスの規制
- 騒音・振動に関する規制
- 化学物質管理に関する法律
- フロン類の管理
- 省エネ法や自治体の報告制度
- 顧客との契約上の環境要求
- 地域との協定
順守義務に関するリスクは比較的分かりやすく、法令違反、届出漏れ、測定漏れ、委託先管理不足、記録不備などが挙げられます。
一方で、順守義務への対応は機会にもなります。法令管理を整えることで、社内の管理レベルが上がる、顧客からの信頼が高まる、外部委託先との関係が整理される、といった効果も期待できます。
変更や外部環境の変化から考える
リスクと機会は、一度整理したら終わりではありません。自社や外部環境に変化があれば、見直すことが必要です。
たとえば、次のような変化があった場合は確認のタイミングです。
- 新しい設備を導入した
- 新しい工程や製品を始めた
- 原材料や化学物質を変更した
- 外部委託先を変更した
- 顧客要求や法令・条例が変わった
- 環境事故やヒヤリハットが発生した
- 猛暑、豪雨、台風などの影響が増えた
- エネルギー価格や原材料価格が大きく変動した
変更があると、新しいリスクや機会が生まれることがあります。
ここでいう変更管理とは、設備、工程、原材料、外部委託先などが変わるときに、事前に環境への影響を確認する仕組みのことです。
変更管理については、次回の記事で詳しく解説します。
EMSでよくあるリスクの例
法規制違反のリスク
代表的なリスクの一つが、法規制違反です。
たとえば、廃棄物契約書やマニフェストの不備、許可証の期限切れ、排水・排ガス測定の漏れ、化学物質の届出漏れ、フロン点検の未実施、騒音・振動規制の確認不足などが挙げられます。
法規制違反は、行政指導や罰則だけでなく、顧客や地域社会からの信頼低下にもつながる可能性があります。
法令管理表や順守評価の結果を定期的に確認し、リスクとして整理しておきましょう。
廃棄物管理のリスク
廃棄物管理は、多くの会社に関係するテーマです。
- 分別が不十分で処理費用が増える
- 保管場所が乱れて飛散・流出が起きる
- 委託先の許可内容を確認していない
- 契約書やマニフェストに不備がある
- 廃棄物量が増えて環境目標が達成できない
廃棄物は、法令順守、コスト、現場管理、外部委託先管理のすべてに関係します。
リスクとして整理するだけでなく、分別の徹底、再資源化、歩留まり改善といった機会にもつなげることができます。
化学物質漏えいのリスク
化学物質を扱う会社では、漏えいや誤使用のリスクがあります。
たとえば、次のようなものです。
- 保管容器からの漏れ
- ラベル表示やSDS管理の不備
- 使用量・在庫量の把握不足
- 作業者教育の不足
- 緊急時対応手順の未整備
SDSとは、安全データシートのことです。化学物質の性質、危険有害性、取扱い方法、緊急時対応などが記載された資料です。
化学物質の漏えいは、土壌汚染、水質汚濁、作業者の安全、地域への影響につながる可能性があります。
保管管理、定期点検、教育、緊急時対応とセットで考えることが重要です。
異常気象や気候変動によるリスク
気候変動はISO14001:2026で重要なテーマの一つですが、すべての会社で同じ対応が求められるわけではありません。
まず、自社の事業や拠点にとって、気候変動がどのような影響をもたらし得るかを確認することが大切です。
関係がある場合は、次のようなリスクが考えられます。
- 猛暑による作業効率低下や熱中症リスク
- 豪雨・台風による操業停止や浸水被害
- 物流停止による納期遅延
- エネルギー価格上昇によるコスト増
- 顧客からの脱炭素要求に対応できないことによる受注機会の損失
気候変動は、単なる環境問題ではなく、事業継続や顧客対応にも関わるテーマとして考えると整理しやすくなります。
EMSが形だけになるリスク
見落としやすいリスクとして、EMS活動そのものが形だけになるリスクがあります。
- 環境側面評価表を毎年コピーしている
- リスクと機会の一覧表を作っているだけで活動につながっていない
- 環境目標が実際の業務とつながっていない
- 内部監査が帳票確認だけになっている
- 現場がEMS活動の意味を理解していない
- 担当者が変わると仕組みが止まる
これは法令違反のように分かりやすいリスクではありません。
しかし、EMSが形だけになると、環境パフォーマンスの改善や不具合の予防につながりにくくなります。
審査でも、「なぜそのリスクと機会を選んだのか」「どう活動につなげているか」が確認されることがあります。
EMSでよくある機会の例
省エネによるコスト削減
分かりやすい機会の一つが省エネです。
電力や燃料の使用量を減らすことは、環境負荷の低減とコスト削減の両方につながります。
たとえば、次のような取組みがあります。
- 空調設定の見直し
- コンプレッサーやポンプの運用改善
- 照明のLED化
- 設備の待機電力削減
- 生産効率の改善
- エネルギー使用量の見える化
省エネは環境目標にもつなげやすく、現場にも説明しやすいテーマです。
廃棄物削減による効率化
廃棄物削減も、機会として考えやすいテーマです。
たとえば、次のような取組みがあります。
- 分別の徹底
- 歩留まり改善
- 不良品削減
- 梱包材削減
- 再資源化の推進
- 通い箱の利用
- 材料ロスの削減
廃棄物削減は、処理費用の削減だけでなく、生産効率や品質改善にもつながることがあります。
環境配慮製品・サービスによる顧客評価向上
環境側面には、プラスの影響もあります。
たとえば、次のような製品やサービスは顧客評価の向上につながる可能性があります。
- 省エネ性能の高い製品
- 長寿命設計による廃棄物削減
- リサイクルしやすい製品設計
- 軽量化による輸送負荷低減
- 梱包材を減らした製品
- 顧客の省エネに役立つサービス
- 廃棄物削減を支援するサービス
こうした取組みは、環境への良い影響を広げながら、自社の強みとして打ち出せる場合があります。
環境への貢献と事業価値の向上を同時に実現できる機会として、積極的に考えてみてください。
サプライチェーン対応による取引継続
近年は、顧客や親会社から環境情報の提供を求められることが増えています。
たとえば、次のような情報です。
- CO2排出量
- 化学物質の使用状況
- 廃棄物管理の状況
- 環境法令順守の状況
- 環境目標や改善活動の内容
こうした要求に対応できることは、取引継続や顧客からの信頼につながる機会になります。
逆に対応できない場合は、リスクになることもあります。
社員の環境意識向上
EMS活動を通じた社員の環境意識向上も、見逃しやすい機会の一つです。
たとえば、次のような効果が期待できます。
- 現場から改善提案が出やすくなる
- 廃棄物分別が定着する
- 省エネ活動が継続しやすくなる
- 緊急時対応への理解が深まる
- 部門間の連携が進む
数字では表しにくいかもしれませんが、EMSを形だけにしないためには重要な機会です。
リスクと機会を活動に落とし込む方法
ステップ1. 関係する情報を集める
まず、リスクと機会を考えるための情報を集めます。
いきなり白紙から考えるよりも、既にある情報を活用すると整理しやすくなります。
集めるとよい情報の例です。
- 組織の状況
- 利害関係者のニーズ
- 環境側面評価表
- 順守義務の一覧
- 法令順守評価の結果
- 環境目標の達成状況
- 内部監査の結果
- 環境トラブルやヒヤリハット
- 顧客からの要求
- 外部委託先の管理状況
EMS担当者だけで全てを集めようとせず、製造、設備、購買、営業、物流、総務、設計、開発など関係部署に声をかけながら進めましょう。
ステップ2. リスクと機会を一覧にする
次に、リスクと機会を一覧にします。
最初から複雑な様式を作る必要はありません。次のような項目で整理すると使いやすくなります。
| 関連する項目 | リスク | 機会 | 対応の方向性 |
|---|---|---|---|
| 電力使用 | コスト増、CO2排出増 | 省エネ、コスト削減 | 使用量の見える化、省エネ活動 |
| 廃棄物 | 処理費用増、不適正処理 | 分別、再資源化 | 分別教育、委託先確認 |
| 顧客要求 | 回答遅れ、取引影響 | 信頼向上、取引継続 | データ管理、回答手順整備 |
| 気候変動 | 操業停止、物流遅延 | 事業継続対応の強化 | 拠点リスク確認、BCPとの連携 |
| 省エネ製品 | 開発遅れ、競争力低下 | 顧客評価向上 | 開発テーマ設定、営業連携 |
BCPとは、事業継続計画のことです。災害や事故などが起きたときに、事業を止めない、または早く復旧するための計画を指します。
一覧表は、見やすく、更新しやすいことが大切です。
複雑にしすぎると毎年の見直しが負担になり、形だけになりやすくなります。
ステップ3. 優先順位をつける
すべてのリスクと機会に同じレベルで対応する必要はありません。優先順位をつけることが大切です。
優先順位を考えるときの視点の例です。
- 環境影響の大きさ
- 法令・条例との関係
- 顧客要求との関係
- 発生可能性
- 事故や苦情につながる可能性
- コストへの影響
- 改善効果の大きさ
- 気候変動との関係
- 自社の方針や経営課題との関係
点数評価を使う方法もありますが、関係者で話し合って決めても構いません。
大切なのは「なぜ優先すると判断したか」を説明できることです。
ステップ4. 環境目標や運用管理につなげる
リスクと機会を整理したら、環境目標や運用管理につなげます。
| リスク・機会 | つなげる活動 |
|---|---|
| エネルギー価格上昇リスク | 省エネ目標、設備運用改善 |
| 廃棄物処理費用の増加 | 廃棄物削減目標、分別教育 |
| 化学物質漏えいリスク | 保管点検、緊急時対応訓練 |
| 顧客のCO2情報要求 | データ収集手順、営業との連携 |
| 省エネ製品・サービスへの関心 | 開発テーマ、顧客提案 |
| 異常気象による操業影響 | BCP(事業継続計画)や緊急時対応との連携 |
リスクと機会は、一覧表に書いて終わりではありません。実際の活動、教育、点検、目標、内部監査、マネジメントレビューにつなげることが重要です。
ステップ5. 内部監査とマネジメントレビューで確認する
リスクと機会への対応は、内部監査やマネジメントレビューでも確認しましょう。
マネジメントレビューとは、経営層がEMSの状況を確認し、必要な判断や改善につなげる場のことです。
内部監査では、次のような点を確認できます。
- リスクと機会の一覧は現在の実態に合っているか
- 環境側面や順守義務とつながっているか
- 気候変動や外部環境の変化が反映されているか
- 優先順位の考え方は説明できるか
- 必要な対応が実際の活動につながっているか
マネジメントレビューでは、次のような情報として報告できます。
- 重要なリスクと機会
- 環境目標への反映状況
- 法令順守や顧客要求への対応状況
- 気候変動や外部環境の変化
- 必要な資源や体制の見直し
内部監査とマネジメントレビューに反映することで、リスクと機会がEMS全体の改善につながっていきます。
実務者向けの注意点
リスクと機会の一覧表を作るだけで終わらせないようにしましょう。
EMS担当者の中には、審査対応として一覧表を作成している方もいるかもしれません。しかし、審査で確認されやすいのは「一覧表があるか」だけではありません。
大切なのは、次の点です。
- なぜそのリスクと機会を選んだのか
- 環境側面、順守義務、組織の状況、利害関係者とつながっているか
- 優先順位をどのように考えたか
- 環境目標や運用管理に反映されているか
- 内部監査やマネジメントレビューで見直しているか
- 変更があったときに更新しているか
リスクと機会は、EMSを実際に動かすための材料です。一覧表を作ることが目的ではなく、改善や予防、環境価値の創出につなげることが目的です。
また、EMS担当者だけで全てを判断しようとしないことも重要です。
製造、設備、購買、営業、物流、総務、設計、開発など、関係部署から情報を集めながら整理していきましょう。
EMS担当者は「一人で全てを抱える人」ではなく、「関係部署と連携しながら仕組みを動かす人」です。
まとめ
ISO14001のリスクと機会は、EMSを実際に機能させるための重要な考え方です。
リスクとは、EMSや環境対応に悪い影響を与える可能性です。事故や法令違反だけでなく、EMSの成果を妨げるものを幅広く考えます。
機会とは、改善、コスト削減、顧客評価、環境価値の向上につながる可能性です。省エネ製品の開発、長寿命設計、顧客の省エネ支援など、環境へのプラスの影響も機会として考えましょう。
ISO14001:2026への対応では、次の点を意識してリスクと機会を見直してみてください。
- リスクは事故や法令違反だけでなく、EMSの成果を妨げるものとして幅広く考える
- 機会は改善・効率化・顧客評価・環境価値の創出につながるものとして考える
- 組織の状況、利害関係者、環境側面、順守義務から洗い出す
- 気候変動については、まず自社との関係を確認する
- 一覧表を作るだけでなく、環境目標や運用管理につなげる
- 内部監査やマネジメントレビューで定期的に見直す
- EMS担当者だけで抱え込まず、関係部署と連携する
難しい規格用語に見えるかもしれませんが、実務では「環境活動をうまく進めるうえでの心配ごと」と「改善や価値につながるチャンス」として考えると理解しやすくなります。
まずは手元にある情報、たとえば環境側面評価表、順守義務の一覧、内部監査の結果などを見直すことから始めてみてください。
次回は、ISO14001:2026で注目される「変更管理」について、設備・工程・外部委託先が変わるときの注意点を解説します。
よくある質問(FAQ)
Q1. ISO14001のリスクと機会とは何ですか?
リスクとは、自社のEMSや環境対応に悪い影響を与える可能性です。機会とは、改善、コスト削減、顧客評価、環境価値の向上につながる可能性です。
化学物質の漏えい、法令違反、廃棄物管理の不備はリスクの例です。
省エネによるコスト削減、環境配慮製品の提案、廃棄物削減、顧客要求への対応は機会の例です。
リスクは「危険な事故」だけでなく、EMSの成果を妨げるものを幅広く考えることが大切です。
Q2. リスクと機会は必ず点数評価しなければなりませんか?
必ずしも点数評価が必要というわけではありません。
点数評価を使う会社もありますが、関係者で話し合って優先順位を決める方法もあります。
たとえば、最初は「重要」「要注意」「参考」程度に分類するだけでも構いません。
大切なのは、どのリスクと機会を重要と判断したのか、その理由を説明できることです。まずはシンプルな方法から始めてみましょう。
Q3. 環境側面とリスクと機会は何が違いますか?
環境側面は、自社の活動・製品・サービスが環境と関わるポイントです。
リスクと機会は、その環境側面や順守義務、組織の状況などから見えてくる「悪い影響の可能性」と「改善や価値につながる可能性」です。
たとえば、電力使用は環境側面です。
そこから、エネルギー価格上昇やCO2排出量増加というリスク、省エネやコスト削減という機会が見えてきます。
環境側面を整理するときに、あわせてリスクと機会を考えると全体がつながりやすくなります。
Q4. 機会は必ず環境目標にしなければなりませんか?
すべての機会を環境目標にする必要はありません。
重要度が高いもの、自社の方針や環境側面と関係が深いもの、改善効果が大きいものを優先して、環境目標や活動計画につなげていくとよいでしょう。
Q5. 気候変動はリスクと機会に入れる必要がありますか?
まず、自社の事業や拠点にとって気候変動がどのような影響をもたらし得るかを確認することが大切です。
関係がある場合は、リスクと機会に反映しましょう。
猛暑や豪雨による操業影響、エネルギー価格上昇、顧客からの脱炭素要求はリスクになり得ます。
省エネ製品や顧客の環境対応を支援するサービスは機会になり得ます。
自社との関係を確認しながら、必要な範囲で取り上げることが現実的です。
Q6. リスクと機会の一覧表は毎年見直す必要がありますか?
定期的な見直しは必要です。
特に、新設備・新工程・新製品の導入、外部委託先の変更、法令改正、顧客要求の変化、環境トラブルの発生、気候変動による影響などがあった場合は見直しのタイミングです。
毎年同じ一覧表をコピーするだけでは、現在の業務実態に合わなくなる可能性があります。
Q7. リスクと機会はEMS担当者だけで整理できますか?
EMS担当者だけで全てを整理するのは難しい場合が多いです。
リスクと機会は、製造、設備、購買、営業、物流、総務、設計、開発など、さまざまな部門に関係します。
EMS担当者は「一人で全てを判断する人」ではなく、「関係部署から情報を集め、一覧表や活動計画に整理する役割を担う人」と考えると進めやすくなります。
まずは相談しやすい部署に声をかけることから始めてみてください。

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