- はじめに|箇条5は「経営層と現場をつなぐ」要求事項
- ISO45001の箇条5「リーダーシップ及び働く人の参加」の全体像
- 箇条5.1|リーダーシップ及びコミットメントとは
- 箇条5.2|労働安全衛生方針とは
- 箇条5.3|組織の役割、責任及び権限
- 箇条5.4|働く人の協議及び参加
- 安全衛生委員会を箇条5にどう活用するか
- 箇条5で確認するとよい記録・資料の例
- 初任担当者が箇条5でつまずきやすいポイント
- トップマネジメントの関与
- 労働安全衛生方針
- 役割、責任及び権限
- 働く人の協議及び参加
- Q1. トップマネジメントは、すべての安全衛生活動に参加しなければなりませんか?
- Q2. 労働安全衛生方針は毎年変更する必要がありますか?
- Q3. 「協議」と「参加」はどう違いますか?
- Q4. 安全衛生委員会を開催していれば、働く人の参加は十分ですか?
- Q5. 中小企業で人が少ない場合、役割責任はどこまで決めればよいですか?
- Q6. 働く人がヒヤリハットをなかなか出してくれない場合は?
- Q7. 管理職が委員会に出ていれば、働く人の参加として十分ですか?
はじめに|箇条5は「経営層と現場をつなぐ」要求事項
ISO45001を担当し始めたとき、箇条5「リーダーシップ及び働く人の参加」は少し扱いにくいと感じるかもしれません。
その理由は明快です。箇条5は、担当者が一人で書類を整えれば完結する箇条ではないからです。
箇条5では、トップマネジメントの関与、労働安全衛生方針、役割・責任・権限の明確化、そして働く人の協議及び参加というテーマが扱われます。つまり、経営層から現場まで、組織全体が関わる箇条です。
ISO45001は、安全衛生担当者やISO事務局だけで回す仕組みではありません。トップマネジメントが方針を示し、必要な資源を確保し、現場の働く人が危険源や改善点を伝えられる環境が整って初めて、実効性のある労働安全衛生マネジメントシステムになります。
この記事では、ISO45001の箇条5について、初任担当者が実務で確認すべきポイントを順を追って整理します。「まずここから確認しよう」という視点で読んでください。
ISO45001の箇条5「リーダーシップ及び働く人の参加」の全体像
箇条5は、次の4つの要求事項で構成されています。
- 5.1 リーダーシップ及びコミットメント
- 5.2 労働安全衛生方針
- 5.3 組織の役割、責任及び権限
- 5.4 働く人の協議及び参加
初任担当者は、まず次のように整理してみてください。
| 箇条 | 考えるべきこと |
|---|---|
| 5.1 | トップマネジメントが安全衛生に責任を持ち、実際に関与しているか |
| 5.2 | 労働安全衛生方針があり、会社の方向性を示しているか |
| 5.3 | 誰が何を担当し、どこまで判断できるかが明確か |
| 5.4 | 働く人が意見を出し、活動に参加できているか |
箇条5全体を貫く考え方は2つです。
1つ目は、トップマネジメントが労働安全衛生に責任を持つことです。
2つ目は、働く人が安全衛生活動に参加し、協議できることです。
この2つが弱いと、ISO45001は事務局だけの活動になりがちです。逆に、経営層と現場の両方が関与していると、安全衛生の仕組みは実務に根づいていきます。
また、箇条5で整えた仕組みは、箇条6の計画、箇条8の運用管理、箇条9のパフォーマンス評価、箇条10の改善活動へとつながっていきます。箇条5は、その後の活動全体を支える土台になるものです。
箇条5.1|リーダーシップ及びコミットメントとは
トップマネジメントに求められること
箇条5.1では、トップマネジメントが労働安全衛生マネジメントシステムに対してリーダーシップとコミットメントを示すことが求められます。
「コミットメント」という言葉は少し堅く聞こえますが、実務では次のように考えると理解しやすいです。
経営層が、安全衛生を会社の重要な取り組みとして位置づけ、言葉と行動で示すこと
ここで注意したいのは、トップマネジメントが労働安全衛生方針に署名しているだけでは不十分という点です。実際に安全衛生活動に関与し、必要な判断や支援を行っていることが重要です。
また、ISO45001では、トップマネジメントが労働安全衛生マネジメントシステムに対して責任を持つという考え方が重視されます。安全衛生担当者やISO事務局に任せきりにするのではなく、経営上の重要なテーマとして扱うことが求められます。
トップマネジメントの関与の例
実務で見られる具体的な関与の例を挙げます。
- 労働安全衛生方針を自分の言葉で示し、社内に発信する
- 安全衛生目標を経営課題として扱う
- 必要な人員、時間、予算、設備などの資源を確保する
- 安全衛生委員会やマネジメントレビューに参加し、課題を議論する
- 労働災害や重大なヒヤリハットの報告を受け、再発防止を確認する
- 現場巡視に参加し、働く人の声を直接聞く
- 危険源の除去やリスク低減に必要な投資を判断する
- 安全よりも納期や生産性を優先するような判断を避ける
- 安全衛生活動の重要性を管理職や現場に伝える
トップマネジメントが「何を言っているか」だけでなく、「どのような場面で実際に関与しているか」が大切です。
担当者が確認すること
初任担当者は、次のような点を確認するとよいでしょう。
- トップマネジメントは労働安全衛生方針を理解し、社内に示しているか
- 安全衛生活動に必要な資源が確保されているか
- 安全衛生目標や活動結果を経営層が確認しているか
- 労働災害や重大なヒヤリハットが経営層へ報告されているか
- マネジメントレビューで安全衛生の課題が議論されているか
- 経営層が現場巡視や安全衛生活動に関与しているか
- 安全衛生に関する判断が、経営判断と切り離されていないか
担当者の役割は、経営層の代わりにすべてを背負うことではありません。経営層が判断しやすいように、安全衛生上の課題、リスク、必要な資源、活動結果を整理して伝えることが重要です。
箇条5.2|労働安全衛生方針とは
方針は「掲示物」ではなく「方向性を示すもの」
箇条5.2では、労働安全衛生方針を定めることが求められます。労働安全衛生方針とは、会社として安全衛生にどう取り組むかを示す基本方針です。
初任担当者には、次のように捉えるとわかりやすいでしょう。
自社が、働く人の安全と健康を守るために大切にする考え方を示したもの
方針は、壁に貼って終わりではありません。安全衛生目標、教育訓練、現場活動、改善活動の方向性を示すものです。方針と目標がつながっていなければ、方針は「飾り」になってしまいます。
労働安全衛生方針に含めたい考え方
方針の内容は組織によって異なりますが、一般的には次のような考え方を含めると整理しやすくなります。
- 働く人の負傷及び健康障害を防止する
- 安全で健康的な職場をつくる
- 労働安全衛生に関する法的要求事項及びその他の要求事項を満たす
- 危険源を除去し、労働安全衛生リスクを低減する
- 働く人の協議及び参加を大切にする
- 労働安全衛生マネジメントシステムを継続的に改善する
ただし、規格の言葉をそのまま並べるだけでは、現場の働く人には伝わりにくいことがあります。自社の業種、作業内容、過去の災害経験、重点課題に合わせて、従業員が理解しやすい言葉に置き換えることが大切です。
方針の見直しイメージ
見直し前の例:
「当社は、労働安全衛生マネジメントシステムを継続的に改善し、法令を遵守します。」
一般的な表現だけでは、自社の課題や取り組みの方向性が見えにくくなります。
見直し後のイメージ:
「当社は、製造現場におけるはさまれ・巻き込まれ災害、重量物取扱い、化学物質による健康障害を重点課題として、働く人の協議及び参加を通じて、安全で健康的な職場づくりを継続的に進めます。」
自社のリスクや重点課題が見えると、方針が実務の活動とつながりやすくなります。
労働安全衛生方針の実務ポイント
- 最新の事業内容やリスクの実態に合っているか
- トップマネジメントが承認しているか
- 働く人に伝わる表現になっているか
- 掲示、教育、朝礼、社内ポータルなどで周知されているか
- 安全衛生目標とつながっているか
- 事業や組織の変化に応じて見直されているか
- 請負業者や協力会社など、必要な関係者にも伝わる形になっているか
方針は「作って終わり」ではありません。現場の活動、目標、教育、マネジメントレビューの中で、繰り返し確認されることで意味を持ちます。
箇条5.3|組織の役割、責任及び権限
「誰が何をするか」と「どこまで判断できるか」を整理する
箇条5.3では、労働安全衛生マネジメントシステムに関する役割、責任及び権限を明確にすることが求められます。
シンプルに言えば、次のことを整理する要求事項です。
誰が、何を、どこまで責任を持ち、どこまで判断できるのか
ISO45001では、トップマネジメントが最終的な責任を持ちつつ、現場管理者、安全衛生担当者、ISO事務局、働く人など、それぞれが担うべき役割があります。
ここで大切なのは、「責任」だけでなく「権限」も明確にすることです。たとえば、危険な作業を止める判断、設備改善を申請する権限、是正処置を指示する権限などが曖昧だと、現場で必要な対応が遅れることがあります。
役割分担の例
| 立場 | 主な役割の例 |
|---|---|
| トップマネジメント | 方針の決定、資源の確保、マネジメントレビュー、重要課題の判断 |
| 安全衛生責任者 | 安全衛生活動の統括、法令対応、目標管理、改善活動の推進 |
| ISO事務局 | 規格要求事項との対応整理、文書・記録管理、内部監査の調整 |
| 現場管理者 | 作業手順の管理、教育、職場巡視、危険源の把握、是正処置 |
| 働く人 | ルールの遵守、危険源やヒヤリハットの報告、改善提案 |
| 産業医・外部専門家 | 健康管理、専門的助言、教育支援 |
| 請負業者・協力会社 | 契約・作業範囲に応じた安全ルールの遵守、情報共有 |
役割分担の表を作ること自体が目的ではありません。実際に活動が滞りなく動いているかどうかが重要です。
担当者が確認すること
- 安全衛生に関する役割、責任及び権限が明確か
- 組織図や職務分掌、安全衛生管理体制表に反映されているか
- 法令上必要な管理者や責任者が選任されているか
- 現場管理者が自分の役割を理解しているか
- 危険な作業を停止・中断する判断の流れが明確か
- ISO事務局だけに業務が集中していないか
- 人事異動や組織変更時に引き継ぎが行われているか
中小企業では、一人が複数の役割を兼務することも珍しくありません。その場合でも、「誰が確認するか」「誰が決定するか」「誰に報告するか」を明確にしておくことが大切です。
なお、法令上必要な安全衛生管理者や作業主任者などの選任要件は、業種、事業場の規模、作業内容によって異なります。最新の要件については、厚生労働省、都道府県労働局、所轄の労働基準監督署などの公的情報を確認してください。
箇条5.4|働く人の協議及び参加
「協議」と「参加」の違い
箇条5.4は、ISO45001の中でも特徴的な要求事項です。
「協議」と「参加」は似た言葉に見えますが、実務では次のように分けて考えると整理しやすくなります。
協議とは、会社が何かを決める前に、働く人の意見を聞き、話し合うことです。
たとえば、次のような場面が考えられます。
- 新しい作業手順を作る前に現場の意見を聞く
- リスクアセスメントの評価方法について現場と確認する
- 安全衛生目標を決める前に、現場の課題を確認する
- 作業変更や設備変更の前に、影響を受ける作業者と相談する
- 教育内容や訓練内容について現場の要望を聞く
参加とは、働く人が安全衛生活動に実際に関わることです。
たとえば、次のような活動が考えられます。
- 危険源やヒヤリハットを報告する
- リスクアセスメントに参加する
- 職場巡視に参加する
- 改善提案を出す
- 安全衛生委員会や小集団活動に参加する
- 作業手順の見直しに参加する
- 事故や不適合の原因分析に参加する
「意見を聞くこと」が協議、「活動に関わること」が参加と考えると、初任担当者にも整理しやすくなります。
働く人には誰が含まれるか
ISO45001でいう「働く人」は、自社の正社員だけを指すとは限りません。業務の状況によっては、パート、アルバイト、派遣労働者、請負業者、協力会社の作業者などが関係する場合もあります。
また、現場で実際に危険源に接しているのは、必ずしも管理職だけではありません。非管理職の働く人、現場作業者、日常業務を行う人の声をどう取り入れるかが重要です。
どこまでを対象として協議及び参加の仕組みに含めるかは、業種、契約形態、作業場所、管理できる範囲、影響を及ぼせる範囲などを踏まえて整理しましょう。
働く人の参加を妨げる要因
「参加してください」と伝えるだけでは、なかなか参加は広がりません。参加を妨げている要因を取り除くことも、担当者の大切な役割です。
よく見られる妨げの例を挙げます。
- 業務が忙しく、安全活動に時間を使えない
- 意見を出しても改善されない、という不信感がある
- ヒヤリハットを提出すると怒られると思っている
- 派遣労働者や請負業者が意見を出しにくい雰囲気がある
- 外国人労働者に情報が伝わっていない
- 報告方法がわかりにくい
- 安全衛生委員会の内容が現場に共有されていない
- 提案しても結果が返ってこない
意見や提案を出した後に「その後どうなったか」が伝わらないと、参加への意欲は徐々に下がっていきます。採用・不採用にかかわらず、結果をフィードバックする仕組みが重要です。
担当者が確認すること
- 働く人が危険源やヒヤリハットを報告できる仕組みがあるか
- 報告した人が不利益を受けない雰囲気があるか
- リスクアセスメントや手順見直しに現場の働く人が関わっているか
- 請負業者、派遣労働者、外国人労働者などの声を聞く仕組みがあるか
- 出された意見や提案に対して、結果のフィードバックがあるか
- 参加を妨げる要因を把握し、取り除く取り組みをしているか
- 現場から出た意見が、目標、運用管理、改善活動につながっているか
安全衛生委員会を箇条5にどう活用するか
日本では、労働安全衛生法に基づき、安全委員会、衛生委員会、安全衛生委員会の設置が必要となる事業場があります。ISO45001の箇条5.4を実務に落とし込むうえで、これらの委員会は重要な場になり得ます。
ただし、委員会を開催しているだけで、働く人の協議及び参加が十分とは限りません。大切なのは、委員会が現場の声を実際に拾い、意思決定や改善につながっているかどうかです。
安全衛生委員会で扱うテーマの例
- 労働災害やヒヤリハットの発生状況と傾向
- リスクアセスメントの結果
- 職場巡視の結果と改善状況
- 安全衛生目標の進捗確認
- 教育訓練の実施状況
- 健康診断、ストレスチェック、メンタルヘルス対策
- 長時間労働、過重労働への対応
- 化学物質の管理状況
- 熱中症対策
- 請負業者、協力会社との安全管理
- 改善提案の対応状況
委員会を実効性のあるものにするポイント
- 議事録を残し、決定事項、担当者、期限を明記する
- 結論を現場へ共有する
- 前回の未完了事項を次回に確認する
- 労働災害やヒヤリハットの傾向を議論する
- 発言しやすい雰囲気をつくる
- 委員会で出た意見を、改善活動やリスクアセスメントに反映する
- 決定事項が実行されたかをフォローする
安全衛生委員会は、法令対応のためだけの会議ではありません。働く人の協議及び参加を実現し、現場の声を労働安全衛生マネジメントシステムに反映するための場として活用できます。
なお、安全衛生委員会の設置義務や運営方法は、業種や事業場の規模によって異なる場合があります。最新の情報は厚生労働省や所轄の労働基準監督署などで確認してください。
箇条5で確認するとよい記録・資料の例
箇条5のすべてについて、決まった様式の文書を用意しなければならないわけではありません。ただし、実務上は次のような資料・記録があると、活動の説明がしやすくなります。
| 確認項目 | 記録・資料の例 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| トップマネジメントの関与 | マネジメントレビュー記録、現場巡視記録、安全衛生委員会の出席記録、社内メッセージ | 経営層が安全衛生の課題を確認し、必要な判断をしているか |
| 労働安全衛生方針 | 方針文書、掲示物、教育資料、周知記録 | 方針が周知され、目標とつながっているか |
| 役割、責任及び権限 | 安全衛生管理体制図、職務分掌表、役割一覧 | 誰が何を担当し、どこまで判断できるかが明確か |
| 協議及び参加 | 安全衛生委員会の議事録、ヒヤリハット報告、改善提案記録、リスクアセスメント参加記録 | 現場の声が仕組みに反映されているか |
記録は、審査のためだけに残すものではありません。活動の抜け漏れを防ぎ、次の改善につなげるために活用することが大切です。
初任担当者が箇条5でつまずきやすいポイント
つまずき1:方針を掲示していればよいと思ってしまう
労働安全衛生方針は、掲示して終わりではありません。安全衛生目標、教育、現場活動、マネジメントレビューとつながっていることが大切です。
つまずき2:トップマネジメントの関与が形式的になる
方針に署名はあるが、経営層が安全衛生目標や労働災害の傾向を把握していない、という状況ではリーダーシップが形だけになりやすいです。
経営層が実際に情報を受け取り、判断に関与できているかを確認しましょう。
つまずき3:ISO事務局だけが安全衛生を抱え込む
ISO45001は事務局だけで運用するものではありません。現場管理者、働く人、経営層がそれぞれの役割を持つことが必要です。
役割分担が不明確だと、活動が事務局に集中しやすくなります。
つまずき4:働く人の参加が「委員会への出席」だけになる
委員会に出席しているだけでは、参加が十分とは言えません。
危険源の報告、リスクアセスメントへの関与、改善提案、手順見直しへの参加など、現場の声が活動に反映される仕組みが重要です。
つまずき5:意見を出してもフィードバックがない
働く人が意見を出しても、その後どうなったかが共有されなければ、参加意欲は下がっていきます。
採用・不採用に関わらず、結果を伝えることが信頼につながります。
つまずき6:管理職の意見だけで「働く人の参加」と考えてしまう
管理職の意見も重要ですが、現場で実際に作業している人の声が届いているかも確認が必要です。
特に、非管理職の働く人、派遣労働者、請負業者、外国人労働者などが関係する職場では、意見を出しやすい方法になっているかを見直してみましょう。
チェックリスト
トップマネジメントの関与
- トップマネジメントが労働安全衛生方針を示しているか
- 安全衛生活動に必要な資源(人員・予算・時間・設備)が確保されているか
- 労働災害や重大なヒヤリハットの情報が経営層へ報告されているか
- マネジメントレビューで安全衛生の課題が議論されているか
- 経営層が現場巡視や安全衛生委員会に関与しているか
- 安全衛生に関する判断が、経営判断と切り離されていないか
労働安全衛生方針
- 自社の事業内容やリスクの実態に合った内容か
- 働く人の安全と健康を守る考え方が示されているか
- 法的要求事項及びその他の要求事項への対応が含まれているか
- 危険源の除去や労働安全衛生リスクの低減が意識されているか
- 働く人の協議及び参加への取り組みが示されているか
- 働く人に周知されているか
- 安全衛生目標とつながっているか
- 必要に応じて見直されているか
役割、責任及び権限
- 安全衛生に関する役割、責任及び権限が明確か
- トップマネジメント、現場管理者、ISO事務局、働く人の役割が整理されているか
- 法令上必要な管理者や責任者が選任されているか
- 現場管理者が自分の役割を理解しているか
- 危険な作業を止める判断や報告の流れが明確か
- 人事異動や組織変更時に役割が見直されているか
- ISO事務局に業務が集中しすぎていないか
働く人の協議及び参加
- 働く人が危険源やヒヤリハットを報告できる仕組みがあるか
- 報告した人が不利益を受けない雰囲気があるか
- リスクアセスメントや手順見直しに現場の働く人が関わっているか
- 安全衛生委員会や職場巡視で現場の意見が扱われているか
- 請負業者、派遣労働者、外国人労働者などの声を聞く仕組みがあるか
- 意見や提案に対してフィードバックがあるか
- 参加を妨げる要因を把握し、取り除く取り組みをしているか
- 現場の声が、目標、運用管理、改善活動に反映されているか
よくある質問
Q1. トップマネジメントは、すべての安全衛生活動に参加しなければなりませんか?
すべての活動に直接参加することが求められているわけではありません。
ただし、安全衛生を重要な経営課題として扱い、方針を示し、資源を確保し、結果を確認することが重要です。実務では、マネジメントレビューへの参加、重大災害の報告確認、現場巡視、安全衛生委員会への関与などを通じてリーダーシップを示すことが考えられます。
Q2. 労働安全衛生方針は毎年変更する必要がありますか?
必ず毎年変更しなければならないわけではありません。
ただし、事業内容、組織体制、法令改正、重大災害、リスクの変化があった場合は、現在の実態に合っているか確認することが大切です。
Q3. 「協議」と「参加」はどう違いますか?
協議は、会社が何かを決める前に働く人の意見を聞き、話し合うことです。
参加は、働く人が安全衛生活動に実際に関わることです。
たとえば、作業手順を見直す前に現場の意見を聞くのが協議、リスクアセスメントや職場巡視に参加するのが参加と考えると整理しやすいでしょう。
Q4. 安全衛生委員会を開催していれば、働く人の参加は十分ですか?
委員会の開催は重要ですが、それだけで十分とは言えません。
現場の意見が委員会に上がり、議論され、改善や意思決定につながっているか、結果が現場へ共有されているかが重要です。議事録に決定事項、担当者、期限を記録し、フォローを続けることをおすすめします。
Q5. 中小企業で人が少ない場合、役割責任はどこまで決めればよいですか?
一人が複数の役割を兼務することも珍しくありません。
その場合でも、「誰が確認するか」「誰が決定するか」「誰に報告するか」を明確にしておくことが大切です。形式的な表をつくることよりも、実際に活動が止まらない役割分担になっているかを確認しましょう。
Q6. 働く人がヒヤリハットをなかなか出してくれない場合は?
ヒヤリハットが少ないことが必ずしも安全な職場とは限りません。
報告しにくい雰囲気、報告方法のわかりにくさ、「提出しても改善されない」という不信感が背景にある場合もあります。まずは、責められない雰囲気づくり、簡単な報告様式の整備、改善結果のフィードバックから始めてみてください。
Q7. 管理職が委員会に出ていれば、働く人の参加として十分ですか?
管理職の参加は大切ですが、それだけで十分とは限りません。
ISO45001では、現場で実際に作業する人の意見や経験を、安全衛生活動に反映することが重要です。非管理職の働く人、派遣労働者、請負業者など、実際にリスクに接する人の声をどのように拾っているかを確認しましょう。
まとめ
ISO45001の箇条5「リーダーシップ及び働く人の参加」は、労働安全衛生マネジメントシステムを実効性のあるものにするための重要な要求事項です。
箇条5で確認する4つのポイントを改めて整理します。
- トップマネジメントの関与:方針の提示、資源確保、結果確認、現場との接点
- 労働安全衛生方針:自社の実態に合った内容、目標とのつながり、周知
- 役割、責任及び権限:誰が何を担当し、どこまで判断できるかの明確化
- 働く人の協議及び参加:意見を聞く仕組み、活動への参加、フィードバック
箇条5を「経営層向けの抽象的な要求事項」と受け取ると、なかなか実務に落とし込めません。
経営層の意思と現場の声を、労働安全衛生マネジメントシステムにつなぐための要求事項と考えると、取り組むべきことが見えやすくなります。
方針を掲示するだけ、委員会を開催するだけでは十分ではありません。トップマネジメントが安全衛生を重要な課題として扱い、現場の働く人の声がリスクアセスメント、目標設定、運用、改善に反映されていくことが、ISO45001の実効性につながります。
次回の第4回では、**ISO45001の箇条6「計画」**を取り上げます。
箇条5で整えたリーダーシップの土台のうえに、箇条6では具体的に「何を計画するか」を定めていきます。危険源の特定、労働安全衛生リスク及び機会の評価、法的要求事項及びその他の要求事項の整理、労働安全衛生目標の設定まで、実務で確認すべきポイントをわかりやすく解説します。
「計画の作り方がわからない」「リスクアセスメントをどこから始めればいいかわからない」という方は、ぜひ次回記事でご確認ください。
法令上の安全衛生管理体制(管理者の選任要件、委員会の設置義務など)は、業種、事業場の規模、作業内容によって異なる場合があります。最新の情報は、厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署、中央労働災害防止協会(中災防)などの公的情報でご確認ください。

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